- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06/27
- メディア: 文庫
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作者の普段のスタイルに完全にだまされた。コミカルなファンタジーかと思ったら、ドロドロのホラーであった。こんな話もかけるのか、と大いに驚かされた。
流れる雰囲気は『静かな闇』という感じだろうか。闇が人々を襲うのではなく、ただそこにもともとあった闇に、人間が触れてしまったという感じ。ちょっと古風な感じの、作者の文体は顕在で、ファンタジーもホラーも似たようなスタイルで(それぞれその文体わ生かして)かき分けていることもすごい。ただ、基本的には不条理で(ホラーとは不条理なものであるが)、投げっぱなしのラストなので個人的には今ひとつか。あと各短編にきつね、ケモノ、ナツメさんなどのどうやら同じものらしきものが繰り返し出てくるが、その意味がいまひとつわからなかった。じっくり考えれば何かあるのだろうか。そう思わせておいて結局なにもない、という不条理さが狙いなのかもしれない。