続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

四畳半神話大系

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

『俺なりの愛だ』『そんな汚いもん、いりません』(私と小津)

森見登美彦さんの小説。『夜は短し歩けよ乙女』に続き、またも鬱屈した冴えない大学生が主人公だ。

全部で四話構成で、それぞれ似て非なるパラレルワールドが広がる。登場人物はみなほぼ同じだが、ほんの少しずつ話が変わっていくのだ。

正直、一話を読んだとき、ちょっといまひとつかな、と思った。『夜は〜』に比べると見劣りするように感じたのだ。しかしこれさえも、おそらくは作者の戦略だったに違いない。二話を読み、パラレルワールドの構造に面白味を覚える。三話を読み、そういうことかと納得した。そして、最終話に度肝を抜かれた。そんな展開ありなのか、と。余談だが、パラレルワールドを超えて旅をしていく『もちぐま』の存在がなんだかとてもかわいらしい。同じくパラレルワールドを超えてストーリーを追う、読者と同じ立場だからだろうか。『夜は〜』でみられたシュールでファンタスティックな世界はここにも健在である(両作品は世界を共有しており、同じ登場人物もいる)。

しかしまぁ、よくもこんな手間のかかるお話を書いたもんだ。作者の努力に頭が下がる。