四畳半神話大系
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/03/25
- メディア: 文庫
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『俺なりの愛だ』『そんな汚いもん、いりません』(私と小津)
森見登美彦さんの小説。『夜は短し歩けよ乙女』に続き、またも鬱屈した冴えない大学生が主人公だ。
全部で四話構成で、それぞれ似て非なるパラレルワールドが広がる。登場人物はみなほぼ同じだが、ほんの少しずつ話が変わっていくのだ。
正直、一話を読んだとき、ちょっといまひとつかな、と思った。『夜は〜』に比べると見劣りするように感じたのだ。しかしこれさえも、おそらくは作者の戦略だったに違いない。二話を読み、パラレルワールドの構造に面白味を覚える。三話を読み、そういうことかと納得した。そして、最終話に度肝を抜かれた。そんな展開ありなのか、と。余談だが、パラレルワールドを超えて旅をしていく『もちぐま』の存在がなんだかとてもかわいらしい。同じくパラレルワールドを超えてストーリーを追う、読者と同じ立場だからだろうか。『夜は〜』でみられたシュールでファンタスティックな世界はここにも健在である(両作品は世界を共有しており、同じ登場人物もいる)。
しかしまぁ、よくもこんな手間のかかるお話を書いたもんだ。作者の努力に頭が下がる。