続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

影男

影男 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

影男 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

大槻ケンヂの影男に影響され、初めて江戸川乱歩作品に手を出した。


人の裏側を覗くことが趣味で、それを生業とする犯罪の天才『影男』。彼の周りには、狂気と幻想の入り混じる世界が広がる。しかし、一見狂気に満ちた登場人物は、その実日に人間的である。あるものは己の不甲斐なさを呪い、あるものは愛する妻に裏切られたことを呪う。そして、みな平凡な生活を得ようと勤める。極めて普通の行いである。一方で、彼らは人にみせることのできない業を背負い、苦しむ。この平凡な日常と己の狂気とのギャップを埋めるのが影男という狂言回しである。彼ほど人間らしい犯罪者を、ぼくは知らない。