続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ストレッチ アキリ

『一人より、二人がほぐれる』(帯より)

マイナー漫画なんだけど、個人的には究極の癒し漫画。心が折れ疲れている人に読んでほしいり 。心身ともに癒されるはずだ。

銀河鉄道の夜 宮沢賢治

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

この本を作った人に感謝したい。素晴らしい一冊だ。言わずと知れた宮沢賢治の名作を中心に、コンパクトにそのエッセンスが集約されている。作品のチョイスや、順番もすごくいい。

装丁もすごくいい。真っ青な表紙に銀色のもじが輝く。すごく『らしさ』が出ている。最もこの装丁は新潮文庫のシリーズで多くの作品に適用されている。でも、特に宮沢賢治にぴったりだ。

コンパクトながら、多数の中〜短編を含んでいて、読み応えがある。国語の教科書に載っているような作品も多いから普段本を読まない人でもとっつきやすいだろう。

ちょっと読書でもしてみようかと思う人にオススメしたい。

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

スター・ウォーズ/最後のジェダイ  オリジナル・サウンドトラック

スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック

前作は新シリーズの顔見せと言う感じだったスター・ウォーズ。今作では歩き始めたキャラクター達が加速して、物語は大きなうねりをなしていく。スター・ウォーズ・サーガと呼ぶにふさわしい。

ついに描かれた英雄ルークのその後。前作のハン・ソロがそうだったように、かつての伝説にはふさわしい退場の舞台が用意されるのは物語として当然だろう。問題はどう退場させるかだ。ルークは運命に翻弄されたが、もともとは貧しい家庭の青年だった。ただの一般人だった。その血筋と世情が彼を英雄にしたのだ。彼に押しかかる大きすぎる責務対して、彼は果たしてどう対応するのか。

また本作の1つのテーマは師匠と弟子である。そして、その継承の過程が、そのまま時代のうねりとなっていく。ルークからレイへ。スタークからレンへ。ヨーダからルークへ。フォースの使い手だけではない。レジスタンスの中でも受け継がれるものがある。

そして、どうやらこの新三部作はどうやらカイロ・レンの物語であるらしい。彼はどこから来てどこへ行くのか。闇の深淵を極めるのか。光を求めるのか。続きが気になって仕方がない。

レスラー ダーレン・アロノフスキー

 

レスラー スペシャル・エディション [Blu-ray]

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「あそこが、オレの場所だ」(ランディ)

 

プロレスラーのランディはかつては業界を牽引するスター選手であった。しかし年とともに体は限界に近づき、ランディは「かつてのスター選手」としてかろうじてレスラーとして生活していた。そうはいってもレスラーだけでは稼ぎも少なく、平日はスーパーでアルバイトに明け暮れる日々。近所の子供達にはあいそをつかされ、娘とも疎遠になる。熱をあげてたストリップ女優のキャシディにも距離をおかれてしまう。ついには心不全で倒れ、レスラー人生にドクターストップのかかるランディ。果たして彼のレスラー人生はどうなるのか。

 

ぼくはプロレスには詳しくないが、友人のプロレスヲタクがいうには「プロレスは人生」であるらしい。この映画も「プロレス=人生」という図式を描いている。

 

プロレスはショウである。大の大人が肉体を鍛え上げ、ファンタジックな格闘を繰り広げるのだ。虚実入りまじる幻想が観客を魅了する。

 

試合の価値を決めるのは観客である。観客が観て聴いて感じたものがそのプロレスの価値である。フィクションとわかっていてもなお、そこには価値が生まれる。

 

人生も同じだと思う。「あの人の人生」と言われるとき、それは常に「他人からみたあの人の人生」なのである。他人の評価にさらされる存在であると言う点で、人生とプロレスはよく似ている。その裏になにがあろうと関係ない。ランディが薬で体の劣化を無理矢理補って戦うように、小さな不正を犯してでも人生は突き進んでいく(真っ白な人間などいないだろう)。

 

ランディは迷った挙句に「レスラー」であることを選ぶ。それが自分の誇りなのだと。それしか自分の道はないのだと。一方で、年増のストリップ女優となってしまったキャシディは、その人生をランディと対象的に描かれる。彼女は彼女の幸せを考えて人生の舵をきった。彼女もプロとして誇りをもった人間であると思う。ガキにババア呼ばわりされても、プロとして客をとることを優先した。ランディに惹かれながらも、客との一線を明確に引いていた。

 

きっとほとんどの人間はキャシディなのだ。だからこそランディの選択が光る。この映画は、プロレスを題材にあげて人生を描いている。人生ほど人間にとって普遍的テーマはないだろう。そこにミッキー・ロークの哀しみ溢れる演技があいまって、本作は100年後に残る名作となったのだ。。

街道をゆく 司馬遼太郎 モンゴル編

街道をゆく 5 モンゴル紀行 (朝日文庫)

街道をゆく 5 モンゴル紀行 (朝日文庫)

仕事でモンゴルへ行くことになったので、地球の歩き方と合わせて購入。無論、今となっては古い情報なのだが司馬遼太郎という賢人の眼を通してみるモンゴルには今に通じるものがある。

特に人、時代が変わってもモンゴル人の持つ本質的な気質は変わらない。朗らかでおおらかな国民性を、この本から学び、そして実際に体験した。

あとはざっくりと、モンゴルという国の成り立ちを知ることもできて良い。

ジブリの哲学 鈴木敏夫

ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの

ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの

最近、Podcastで鈴木さんのラジオ『ジブリ汗まみれ』を聞いている。これがなかなか面白く、鈴木さんの教養というか賢さというか、人柄のにじみ出る良いラジオである。

探してみると、3大ジブリ巨星である宮崎駿高畑勲、そして鈴木敏夫の著作派いろいろあるようだ。3人が一体何を考え、感じているのか是非ともいろいろ読んでみたい。

そんなことでこの本に行き着いた。読んで感じた第1のものは著者は『観ること』と『言葉にすること』の秀才だということ。

短い言葉で、ありありとその場の空気や個人の人となりを伝える。これは実に難しい。でも著者の文章はすんなりと制作の現場を伝えてくれる。常に良く観察し、特徴を抽出して言葉に置き換える。そのトレーニングの賜物なのだと感じた。

こんな人だからこそ、ジブリの経営を支えてこれたのだろう。なんだか妙に納得した。

ところで、あとがきで著者を述べているがこの本は編集が絶妙である。いろんな雑誌の記事をかき集めた本のため内容にバラツキがあるはずなのだが、そこに一本の筋を通し通している。

にんげんに背骨を入れたような、そんな仕事で編集って大事なんだと感じた。

赤緑黒白 森博嗣

Vシリーズもついに最終巻。スプレーで真っ赤に塗りつぶされた死体が発見された。一体犯人の目的は…。あざ笑うかのように、第2の死体は緑に塗装されていた。被害者の名前は赤井と美都里。いつもの阿漕荘メンバーも巻き込まれ、正体の見えない事件は進む。

テーマとしてはSMシリーズの『封印再度』に近いが、ちょっと違うか。

どちらかといえば、他で公開されている短編やSMシリーズとのつながりが見えるのがファンとしては嬉しいところ。

SMシリーズと比べるとパンチに欠けるイメージのあるVシリーズだけれど、クラシカルでシンプルなミステリとして完成度は高い。同じミステリでも、こういった細かい描きわけができるのが著者の凄さなさだと改めて感じた。