続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

自閉症の僕が飛び跳ねる理由 東田直樹

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

自閉症患者である著者が中学生のときに綴った、自分たちのこと。

ここの本は自閉症というものを理解する上で、とても貴重な資料なのでは無いだろうか。自閉症患者の内面を、非常にわかりやすく質問形式で表している。もちろん著者の「ぼくら」という表現は、厳密には「ぼく」であり、他の自閉症患者も同じように感じているのかはわからない。しかし、同じように感じている可能性は高いだろう。

自閉症という文字が、この疾患に実際とはズレたイメージを与えている気がする。外界からのインプットを遮断し、内面にばかり目がいく。結果として非常に未熟で幼稚で、周りから理解できない性質を獲得してしまうのだと。

だか、この本を読めばそんなことは全くないことがわかる。自閉症患者も外界から多くをインプットし、考え、彼らなりに取り組もうとしているのだ。

自閉症精神疾患である。「精神」というのは意味が曖昧で、捉えにくいのだが、ここでは「心と身体をつなぐもの」という理解が当てはまるように思う。自閉症患者はこの精神にトラブルを抱えているため、うまく身体をコントロールできないのだ。それは手足だけでなく、脳内の記憶や意思決定にも及ぶようだ。その結果として、その行動は外から見ると幼稚で理解できないものに見えてしまうらしい。

しかし、自閉症患者も健常者と同じように、あるいは健常者以上に、複雑で豊かな心を持っている。その心の一端を知ることができるのがこの一冊だと思う。

自閉症を語るなら必ず読むべき一冊だと思った。