続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

家守奇譚 梨木香歩

家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚 (新潮文庫)

「こういう生活は----私の精神を養わない」(綿貫征四郎)

 亡き友人高堂の実家の家守を務めることになった売れない物書きの綿貫。緑しげる家で彼は不思議な経験をする。
 ゆったりとした時間の中で、人ならぬものとの交流を深めていく綿貫。静かで味わい深い生活がそこにある。
 売れない物書き青年が、天然自然の「気」と触れ合う物語。ふらりふらりと人間の世界とあちらの世界を行き来してしまう彼はなんとも不安定で儚げだ。物語全体にこの不安定な雰囲気があり、日常生活を描いているシーンですらなにやら独特の雰囲気が漂う。
 現代の世界は科学の時代だ。論理が全てに勝る。しかし、ひと昔前は違う世界もあったのだろう。それは妖精や妖怪などの人に在らざるものたちと共存する世界である。いわばイマジネーションの世界である。現代の論理はイマジネーションの世界を破壊して人間の世界を広げていく。しかし、全てを白日のもとに晒す必要があるだろうか。綿貫のように共存することも一つの道ではないだろうか。
 ところで、この主人公まるで少女漫画の登場人物のようで、どうも男の目線からすると「こんなやついねーよ」という感じが拭えない。逆に女の子からすると理想的な男の子の1つの像なのかもしれないのだが。また世界観と設定が漫画xxxHolicによく似ている。主人公も文字は違うがワタヌキだし。どちらかがどちらかにインスパイアされているのだろうか。