×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル 西尾維新
xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル (講談社文庫)
- 作者: 西尾維新,CLAMP
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/01/16
- メディア: 文庫
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「ナンバーワンだって、ワン・オブ・ゼムという事実から逃れることはできないのよ」(壱原侑子)
西尾維新がホリックに世界を描く。最初に京極夏彦の「姑獲鳥の夏」から引用がある。昔、この本を読んだ時には「ああ、妖怪ってそういうものか」とずいぶん納得した。本作もこの引用が全体にテーマとして貫かれる。
全体に原作の雰囲気がよく出ている。人の心が生み出すあやかしを描く。妖怪は居るのだ。人々の心の中に。
私の嫌いな探偵 東川篤哉
- 作者: 東川篤哉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/12/08
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コメディ・ミステリとでもいうべき独特の作風。肩の力を抜いて読める。5分間ミステリシリーズを少し長めにした感じか。
キャラクターや事件のが大変コミカル。というかこういう漫画あるよね?たぶん。どうもコミカルさが強くて現実味に欠ける感じ。中学生の頃ぐらいなら、もっと楽しめたのかなあ。
命売ります 三島由紀夫
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1998/02
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「生きたいという欲が、物事を複雑怪奇に見せてしまうんです」(羽仁男)
己の人生に飽き飽きし、自分の命を売ってしまうことにした青年、羽仁男。彼の新聞広告に誘われて舞い込む奇妙な依頼の数々。果たして彼の運命やいかに。
平凡な人生に人は飽き飽きしている。いっそ諦めてしまおうと思うと、羽仁男のもとには数奇な運命が舞い込んでくる。人生はそんなものかもしれない。捨てようと思うと、案外いい方向へ転がっていくのだ。逆もまた然り。これは頭の悪い人間の言い分かもしれない。でも、頭のいい人間より、悪い人間の方が多いのだ。数が多いほうが正しいのなら、頭の悪い人間の人生が正しい。とにかく、思うようにならないのが人生だ。
三島由紀夫は名文家と誰かが評していた。確かに、本作はスラスラと読める。1968年の作品とは思えない。古臭さを感じさせない。テーマもまた現代に通じる。命を捨てようとする若者は今も昔もいるのだろう。社会とはそういうものだ。馴染めない奴はいるものだ。一部を切って、全体を生かすのが社会なのだから。もし、悲しい「一部」だと自分を感じるなら、本作を読んでみるがいい。諦めることで開けるものがあるのかもしれない。
おいしい生活 ウディ・アレン
- 発売日: 2013/11/26
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泥棒を生業とする、自称切れ者のレイは最高の銀号強盗を思いつく。銀行の隣に店を構え、こっそり地下を掘って金庫に侵入しようというのだ。さっそくクッキー屋を構え仕事にかかるレイと仲間たち。しかし、カモフラージュにつもりのクッキー屋が思いの外大繁盛してしまう。
世の中思うようにはいかないものだ。そんなことをコメディにしたおかしな映画。成功しているのに失敗している。失敗しているのに成功している。どうとるかは観客次第。
全体的にオシャレでユーモラス。どうもこの感じは日本人には出せない。笑いのセンスが違うのだろう。
映画 立川談志 加藤たかし
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2013/05/02
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「よそう。また夢んなる」(芝浜のサゲ)
落語界の化物、立川談志の晩年を見せるドキュメンタリー映画。
高座の姿だけでなく、舞台裏のリラックスした家元の姿を観れるのが嬉しい。
落語というものに、立川談志というものに触れてみるいい機会となる映画ではなかろうか。映画の後半は談志の芝浜。人間らしさ、あるいは人間の業がにじみ出ている。でも、個人的には鼠穴が観たかった。
有頂天家族 二代目の帰朝 森見登美彦
- 作者: 森見登美彦
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「なぜなら愛とは押しつけるものだからですよ」(淀川教授)
毛玉ファンタジー第2弾。たぬきと天狗と人間の、阿呆な争いがまた始まる。
赤玉先生の息子、通称二代目が京都に帰ってきた。弁天を跡継ぎにと考えていた赤玉先生、息子とは100年に渡る大げんか。たぬき会では新たな頭領、偽右衛門を決めるためあちこちで策略が繰り広げられる。
親を継ぐ、ということがこの作品のテーマだろうか。我らがたぬき4兄弟の長男矢一郎は父である先代偽右衛門のあとを継ぐため奔走する。対するは夷川早雲、あの手この手で自分の評を集めようと暗躍する。一方では、天狗にはならないと心に決めた二代目が赤玉先生と対立する。人間でありながら天狗の力を持つ弁天は、天狗親子を翻弄する。
古き良き「人間臭さ」に溢れるのがこのシリーズのいいところだ。「たぬき臭さ」とでもいうべきか。前作のしっちゃかめっちゃかな大あばれからすると、今作は政治っぽいテーマがあって少し真面目だ。個人的には前作の「京都の街を電車で走り回る」ようなバカバカしい展開が大好きだったので、ちょっと拍子抜けの感じ。ただ、兄弟それぞれの成長が見れたりして、ほっこりした気分になった。
どうやら3部作になるらしく、そこはかとなく伏線が散りばめられているようだ。終わり良ければすべて良し。次も読んで、兄弟たちをのほほんと見守っていたい。
羅生門 黒澤明
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「人の気持ちを考えてたらきりがねぇ!」(泥棒)
昔々、平安京の物語。羅生門で雨宿りする男たち。そのうち2人は、恐ろしい話を見聞きしたという。雨宿りのついでに話を聞こうという男が現れ、物語が語られる。それは1人の男の死についての奇妙な物語であった。
黒澤明の出世作。芥川龍之介の羅生門を下書きとしながら世界観を大きく広げた映画になっている。ストーリーもまるで違うが、テーマは原作と同じ。すなわち人の心であり、その闇を描いている。短編小説を90分の映画に拡大するの手腕は見事。
脚本もさることながら、出演者の演技がすごい。おどろくほどに自然だ。乱闘シーンなども、まるで本気で喧嘩しているようである。演技っぽさが全くない。
人は一体なにを信じて生きていけばいいのか。そんなことを深く考えさせられるいい映画だった。ドロドロしたストーリーでありながら、ラストシーンは希望に満ち溢れている。止まない雨はないのだ。
日本映画界は大ヒット漫画の実写映画を作るより、こういう映画を作るべきだ。日本人にしか出せない、心の機微ってものがある。そういう映画こそ世界が日本に求めているのではないだろうか。