続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ロフト

ロフト. [DVD]

ロフト. [DVD]


秘密のロフトを共有する5人の男達。しかし、そのロフトである日娼婦の死体が発見される。血まみれの遺体を前に、男達の思惑が交錯する。果たして一体誰が犯人なのか。

サスペンス・ミステリー映画。それぞれの駆け引きが実に面白い。5人の主役も真に迫る演技でグッと観客を引き込ませてくれる。映画本来の味である「演技」と「演出」を堪能できる。古き良き映画だ。

男達だけでなく、男達の妻、行きずりの娼婦なども舞台を盛り上げる。秘密のロフトを知るものは誰なのか。なぜ凶行におよんだのか。答えは自分の眼で確かめてほしい。

傷物語 西尾維新

 

傷物語 (講談社BOX)

傷物語 (講談社BOX)

 

 吸血鬼にまつわるこの物語はバッドエンドだ。

みんなが不幸になることで終わりを迎える。(阿良々木暦

 

春休み前日、主人公阿良々木暦は夜の街で吸血鬼に出くわす。しかも、瀕死の吸血鬼に。生来の優しさで吸血鬼を助けた彼は、それをきっかけに夜の世界も住人となり、地獄のような春休みを過ごすことになるのだった。果たして彼はどうなってしまうのか。

 

化物語シリーズは結構昔から友達に薦められていた。読んではみたかったのだけど、中古本がなかなか出回ってなくてやっと巡り合ったという感じだ。

 

主人公視点の一人語りで、さらりと読みやすい文章が続く。軽妙なやりとり、漫画チックなシーンが挟まるので全体的にとても軽くて読みやすい。全体的にストーリーはダークな感じで、グロいシーンもあるのに重さを感じさせない。むしろキレイな印象さえ受ける。

 

アニメ映画を見ているような、読んで楽しい一冊だった。

宮本武蔵 三 吉川英治

宮本武蔵(三) (吉川英治歴史時代文庫)

宮本武蔵(三) (吉川英治歴史時代文庫)

『作法は茶事ではない、作法は心がまえ』(本阿弥光悦

来るべき吉岡清十郎との果し合いに向け、己を磨かんとする武蔵。果たして勝負の行方は。

この他、佐々木小次郎が舞台に上がり物語はますます複雑な人間模様を成していく。キレイな絨毯のように、丁寧に、丁寧に物語が織り進められていく。

ぼくが最も印象に残ったのは武蔵と本阿弥光悦の邂逅の場面。野獣のような武蔵と穏やかな草花のような光悦。両者の対比がおもしろい。そして、それに気づき悩む武蔵を凄いと感じた。まだまだ成長していく武蔵の中でこの出会いはきっと大きなものになるのだろう。

X-file 2016

 

 

超常現象や陰謀に、FBIのモルダーとスカリーが立ち向かう、あのX-fileが帰ってきた。

 

6話それぞれが、今までのX-fileらしさを凝集したような内容になっており、往年のファンならすごく楽しいだろう。逆に、過去のシリーズを見ていない人は置いてけぼりを食らうかもしれない。ちゃんと予習をしてから見よう。ホラーだったり、コメディだったり、超常現象を様々に味付けする監督クリス・カーターの手腕はさすが。

しかし、なんといっても最終話「闘争 Part 2」だろう。ここへ来てついに、引っ張り続けた政府陰謀説に具体的な形が与えられる。ファンとしては「え!?そこオープンにしちゃっていいの!?」と驚いた。オープニングの「The truth is out ther」も今回は「This is the End」に変わっている。

 

ぜひその結末は自分の眼でご覧いただきたい。さすがX-file、さすがクリス・カーターというところだろか。個人的には好きでも嫌いでもないが、「らしさ」を感じたのは間違いない。

シンプル・シモン

シンプル・シモン [DVD]

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「弟を好きなやつなんていない」(お兄ちゃん)

アスペルガー症候群のシモンは自分だけの世界に生きている。全てを予定通りにきっちり生きる。それがシモンの生き方だ。予定通りにいかないことがあると、ドラム缶ロケットに引きこもる。父も母も彼をどうにもすることはできなかった。でもお兄ちゃんだけは違った。シモンと唯一コミュニケーションをとれるお兄ちゃんをシモンは大好きだったのだ。しかし、お兄ちゃんと彼女の同棲生活にシモンがついてきてしまう。そして、シモンに耐えられなかった彼女はお兄ちゃんのもとを離れるのだった。シモンはお兄ちゃんのため、お兄ちゃんにとって完璧な彼女を探すことにする。

お兄ちゃんのためならば、と自分の世界から飛び出すシモン。その独特の思考回路は、全く恋愛を理解できずトラブルを巻き起こす。ハートフルコメディといった感じの柔らかな物語。優しい音楽と、ヨーロッパの柔らかな陽の光が織りなす映像が素晴らしい。実写映像に中にシンプルなアニメーションが組み込まれていてかわいらしい。このアニメーションでうまく「シモンの視点」を描写している。実にうまい。

似たような映画としてはダスティン・ホフマンの「レインマン」がある。レインマンは周囲の人間がいろいろ頑張るお話だったが、こちらはアスペルガーの本人が頑張る。少し視点の違う映画だ。作中でシモンが言うように「アスペルガーはバカじゃ無い」。自分なりに考え、努力しているのだ。

鍵泥棒のメソッド

鍵泥棒のメソッド [DVD]

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「全然納得できない」(綾子)
「納得して生きてるやつなんていねぇよ」(山崎)

金も仕事もない冴えない青年(櫻井)はたまたま行った銭湯で裏稼業の男(山崎さん)と入れ替わることに成功する。大金を手に入れ喜ぶ櫻井。記憶を失いながらも生きようと努力する山崎。そんな2人の人生は複雑な絡み合いを見せ始める。

日本映画らしいしっかりとしたプロット。いい小説を読んだ後のような気持ちの良さがある。細かいことを言えば気になる点はあるが、全体にコメディタッチなので問題なし。だってこれは映画なのだから。作り話なのだから。

映画って本来こう有るべきだと思う。映像やストーリーのリアルさとか、映像技術を駆使したSFもいい。でももっと微妙な「ありそうで無いもの」があると面白い。

博士と狂人 サイモン・ウィンチェスター

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)

『だからこそ、百二十年以上たったいま、このささやかな記述は彼に捧げる言葉で始まるのが適切だと思われる』(著者)

辞書、その存在を意識して生きる人間はどれほどいるのだろうか。この本を読んだならその存在をないがしろにすることはできないだろう。ああ、辞書こそ純化された知識の結晶なのだ。

ぼくたちは知らない言葉をものの数秒でインターネットで検索できる世界に生きている。でも、そのベースを誰が作ったのか。他人の成し遂げた仕事に想いを馳せることは、己の鍛錬につながる。仕事に悩む人にこの1冊を進めたい。