続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

生命とは何か 物理的にみた生細胞 シューレディンガー著 岡小天、鎮目恭夫訳

 

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

 

 1944年に発刊された物理学者の目線で生命の本質を探ろうとする一冊。まだ、遺伝子がタンパク質であると考えられていた時代を考えると、シューレディンガーの考察の鋭さに驚かされる。ちなみに同年、オズワルド・アベリーらが遺伝子の本質がDNAであることを論文として発表した。

 

古い本であるうえ翻訳本なので読むのに苦労した。読んではみたが今一つ理解できないことも多々ある。ぼくの読解力不足をはっきり感じつつも、それでも物理学者の眼からみえる「生物という系」の新鮮さに触れることができたように思う。

 

たとえば、著者は「なぜ生物は(原子と比べて)こんなに大きくなくてはいけないのだろうか?」と考える。個々の原子は無秩序に振る舞う。しかし、集団として統計学的に見れば、おおむね秩序だった振る舞いを見せる。生物の秩序のためにはある程度の原子集団が必要であると考えたのだ。こんな考え方は生物学者にはきっと出来ないだろう。目線が、立ち位置が全くちがう。

 

「考察する」ということを見せつけられたような、そんな気がした。