続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

動物農場 ジョージ・オーウェル

「わしがもっと働けば良いのだ」(ボクサー)

人間に搾取され続ける農場の動物たちは、老豚の言葉で立ち上がる。人間どもを農場から追い出し動物の楽園を作るのだ。かくして動物農場は生まれた。最初こそそれぞれの仕事をのほほんとこなし、ユートピア作りに勤しむ動物たちだったが、次第に頭のいい豚たちが全体を仕切るようになっていく。そして、豚たちは権力におぼれていくのだった。

皮肉たっぷりに人間社会を描き、社会主義を風刺する一作。しかし、今の社会にも通じるものがあるように思う。結局、主義や主張が変わっても中身の構造は大体同じなのだろう。資本主義や民主主義なら良いというわけではないのだ。

個人的には、寡黙な老ロバのベンジャミンが作中唯一叫ぶシーンが心に残る。彼は、賢いが、世の中は変わらないと決め込み行動しない老人の象徴だ。そんな彼が叫ぶのは、労働でくたびれ果てたロバのボクサーが屠場へ連れて行かれる際だった。周りの動物たちはボクサーが病院へ連れて行かれるものと信じている。馬車には屠場行きの文字があるにもかかわらず。「このあきめくらどもめ!」とベンジャミンが叫ぶ。しかし、もう誰にもどうすることもできないのだった。