続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

前巷説百物語 京極夏彦

 

前巷説百物語 (角川文庫)

前巷説百物語 (角川文庫)

 

 

『人はみんな哀しいんだよ』(又一)

 
物語シリーズ第四弾。まだ若い又一が裏の世界へ踏み込むまでを描く。
 
個人的には今までのシリーズの中で1番おもしろかった。若く青臭い又一が、妙に人間味に溢れて良い。世の中はどうにもならぬとわかりながらも必死に足掻く又一は、これまでの老獪なイメージとうってかわって新鮮だ。
 
ストーリーもとても面白い。特に最後の『旧鼠』はしびれた。人と非人、枠組みと自由、表と裏。様々な対立の中に『哀しさ』がある。妖怪はそこから生まれ、あるいはそこに宿る。第1級の哀しさで描かれた物語は残酷で、美しく、儚い。そして妖怪は、人々を恐怖に陥れる存在ではなく、むしろ優しい存在として感じられるようになるのである。