前巷説百物語 京極夏彦
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/25
- メディア: 文庫
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『人はみんな哀しいんだよ』(又一)
百物語シリーズ第四弾。まだ若い又一が裏の世界へ踏み込むまでを描く。
個人的には今までのシリーズの中で1番おもしろかった。若く青臭い又一が、妙に人間味に溢れて良い。世の中はどうにもならぬとわかりながらも必死に足掻く又一は、これまでの老獪なイメージとうってかわって新鮮だ。
ストーリーもとても面白い。特に最後の『旧鼠』はしびれた。人と非人、枠組みと自由、表と裏。様々な対立の中に『哀しさ』がある。妖怪はそこから生まれ、あるいはそこに宿る。第1級の哀しさで描かれた物語は残酷で、美しく、儚い。そして妖怪は、人々を恐怖に陥れる存在ではなく、むしろ優しい存在として感じられるようになるのである。