宵山万華鏡 森見登美彦
「でも頭の天窓が開いただろう?」(乙川)
宵山を舞台に、薄気味悪い怪奇談が、ばかばかしくも壮大なネタが、ホロリとくるお話が繰り広げられる。
個人的には、森見登美彦なりの一つの終着点ではないかと思う。これまでに作者が見せてきた色々な顔が、ここに一度に集約している。そして万華鏡のようにころころと形を変えて読者を翻弄する。一つの物事も、角度を変えれば、捉え方えお変えればこんなにも違うものになるのかと感心させられる。
反面、どの方向にも突き抜けてはいないので「森見登美彦のこの作風が好き!」といったこだわりのある人にはいまじとつかもしれない。