続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

四十九日のレシピ

 

四十九日のレシピ (ポプラ文庫)

四十九日のレシピ (ポプラ文庫)

 

  妻・乙美(おとみ)は逝ってしまった。娘の百合子も旦那の浮気でボロボロになって実家に帰ってきた。地獄のような日常。そこへ金髪ガングロ娘の井本が突然やってくる。乙美からの遺言とある「レシピ」を持って。

 

 いかにもお涙頂戴という感じで、こういうのは個人的には好きではない。故人が聖人君子たる人物で、その所業が回り回って残された人々にも力を与える。ああ、奇跡の連続に読者は涙するのだ。これこそ人間関係の奇跡であると。

 

 別に悪い作品でないとおもうが、何番煎じともわからないぐらい使い古された物語の再利用であることは間違いないだろう。ただ、個人的にはそのまとまりの良さ。特に終盤の風呂敷のたたみ方はとても気に入った。決して大げさなことはなく、気をてらうこと無く、「きれい」に風呂敷を畳んでいる。そこに力みはなく、あるべき形に物語が収まったと感じられる。「そんなの当たり前じゃん?」と思うところだが、物語をきれいに畳むのはとてもむずかしい。あちらをたてればこちらがたたず。理想の形は厳密に定められていて、1箇所がずれるとあちらこちらに別のずれが生じてしまう。だから、この構成力は素晴らしいものだ。

 

 物語のおもしろさを教えてくれる一冊。中2ぐらいの女の子におすすめしたい。