続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一

 

 

密教を盗む」。空海はその決意のもと大陸へ渡った。唐は世界の文明の頂点に達していた。それでも時代はまだまだ闇の中。妖が闊歩し、東西の文明が入り乱れる中、小さな島国からきた若者が縦横無尽に駆け巡る。

 

夢枕獏がお得意の「陰陽師スタイル」で送る空海の物語。全4巻の一巻目なので、物語はまだまだ序章。しかし、それでも空海のにじみでる才能と、橘逸勢のワトソン君っぷりがしっかりと物語を読者に伝える。ってこれ完全に安倍晴明源博雅のキャラを置き換えただけじゃないか。

 

とはいえ時代設定が違うし、舞台も唐なのでやはり物語の筋にも変化がある。あと、短編が基本の陰陽師シリーズと異なり最初から長編の予定の作品なのでじっくりと物語が進んでいく。陰陽師シリーズと同様に、なんとなくその時代の世界観を知るにはいい作品ではないだろうか。

 

夢枕獏の作品は文が短く改行も多いのですらすら読めるのがいいところだ。言葉も平易でわかりやすい。それでいてなんとなく深いセリフなんかがあるのもいい。まさに楽しむための読書という感じでよい。とはいえ、全4巻は結構めんどくさいと思ったりもするのだが。