続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

アジア未知動物紀行 高野秀行

 

 

著者は・・・冒険家、でいいのか。変なものをみたいとの一心で世界中を駆け巡り、未だ存在のあやふやな「未知動物」を探し求める。本作では、ベトナムの猿人「フイハイ」、奄美の妖怪「ケンモン」、アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」を探す。

 

もう名前の時点で動物というより妖怪を探しているのに近いのがひと目で分かる。実際、旅のなかでも動物をさがすというより、正体を探るに近いような雰囲気だ。その過程で、文字にならないような国々の文化やヒトの暮らしが垣間見える。著者の「現場主義」ということもあり、実際の現地の人となりや習慣に基づいた「正体の考察」は案外深みがあって面白い。根っこは違えど、その方向性は水木しげる京極夏彦に近いのではないだろうか。「未知動物」というものを通して、実は暮らしや文化、思想など、そこには人間が描かれている。

 

単純に珍道中ものとしても面白い。読みやすく、読み手を惹きつける文章で十分楽しめた。気楽に楽しめるいい一冊だ。旅のお供にどうぞ。