完全なるチェックメイト
冷戦下の1970年代。ソ連はその叡智をチェスの強さで誇示した。対するアメリカからはボビー・フィッシャーが対抗馬として選出される。国の威厳と存続を賭けたチェスゲーム。極限の環境にボビーは追い込まれていく。
事実に基づく物語をトビー・マグワイアが絶妙な演技で描く。なるほど、この繊細さと神経質な感じを生み出す演技力がサム・ライミ監督のスパイダーマンに活かされたのかと思うと納得である。
劇的なシーンはないが全体を通していい映画といっていいのではないだろうか。冷戦の緊張感、時代背景、プロチェスプレーヤーの過酷さ、メディア、様々な思惑を持つ人々。一つの時代をよく描いた作品だと思う。
盛り上がりとメッセージ性を欠くのが欠点か。しかし、論理を追求するチェスにそんなものは必要ない。むしろ、そこまで含めて監督の狙い通りといえる。そう思えばいい作品だと思うのだ。