続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

洞窟おじさん 加村一馬

 

洞窟オジさん (小学館文庫)

洞窟オジさん (小学館文庫)

 

 

驚くべきことに、著者は少年時代から43年間孤独なサバイバル生活を送ってきた。両親からの過酷な虐待に耐えかねた中学生は、家を飛び出し、廃坑となっていた足尾銅山で生きる道を選んだ。愛犬のシロとともに洞窟で暮らし、ウサギ、ヘビ、カタツムリ。時にイノシシ食べて生きた。おじさんは今も存命である。

 

おじさんのサバイバル生活の話も凄まじいが、同時に人々との出会いのエピソードにも心打たれるものがある。おじさんはシロの死とともに洞窟をでる。社会のことを何も知らない(おじさんは、お金のこともよくわかっていなかった)まま、山菜をとり、川で魚をとり生きる。山で獣のように生きてきたおじさんだが、不思議なことに少しずつ人々の中に溶け込んでいくのだ。山菜は観光客に売ってお金に変えた。釣りを通して仲間ができた。人間っていいもんだな、と思わせてくれる。もちろんおじさんの人柄によるところも大きいのだろう。最終的におじさんは一応社会復帰もできている。

 

おじさんは今も前向きに生きている。決してひがむことなく、自分が次にやりたいことに邁進している。今のおじさんの夢は子供達に自分の培ったサバイバル術を教えてあげることなのだという。おじさんは社会的な成功者ではないかもしれない。でも、生物としての強さをしっかりと持って生きている。今、改めて見直すべきものがおじさんの人生の中に隠れているように思われる。