続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

銃・病原菌・鉄(下) ジャレド・ダイアモンド

 

 

ずいぶん間が空いたけど下巻を読んだ。本題に入り「どうして欧州の人々が世界の覇権を取ったのか?」という疑問に対する著者の答えが示されていく。

 

蓋を開ければ答えはシンプル。「たまたまいい環境にいた人類が最も文明を発達させたから」ということであった。ただ、著者も説明しているがこれは「環境が全てで個人の能力など関係ない」ということではない。個々が生きる努力を積み重ねる中で、巨視的な視点で見ると良い環境に生きる大きな群れの中にはイノベーションが起きる可能性が相対的に高い。そのイノベーションの積み重ねが文明の進歩の違いになる、ということだ。

 

いずれ文明は衝突する。その時により進歩した文明を持つ方が有利なのだ。欧州の人々はいい環境で、最も進歩した文明を獲得した。故に世界の覇権をとったのだ。

 

とにかく驚かされるのは著者の知識の幅広さ。本当に世界中の歴史を縦横無尽に考察する。

 

本書の中では様々な文明の発展の流れが紹介されるが、多くの文明の発達の基盤として共通するのは食糧供給の安定化だ。狩猟生活を送っていた古代人は、条件が整うと農耕を始め、これにより食糧供給が安定する。食糧に余裕が生まれれば、みんなで狩りに行かなくてもよくなる。生きることに余裕が生まれたことで文字や道具が進歩し、知識階級が現れれば政治が始まり、徐々に規模の大きな集団が形成されていく。最終的には国に行き着く(もっと先もあるのかもしれない)。

 

だから、この本によれば国の基盤は食糧だ。食糧を自給することが国の土台だ。その余裕の中で文明が進歩していく。日本は食糧自給率が40%を切っている。もちろん、古代と現代は全く状況が違う。ただ、人は食わねば生きていけないというのは変わらない。僕らは足元を見直してみるべきなのかもしれない。

 

〜追記〜

 

この本で一番大きなメッセージは「人間の力が現代の社会勢力の違いを作ったんじゃないんだよ。ただ、いい環境にいた奴らが有利な位置に立っただけなんだ」という点だろう。これはあくまでも巨視的な視点での話だが、個人レベルに落とし込んでもある程度は当てはめられるかもしれない。

 

金持ちの子と貧乏人の子なら、金持ちの子がいい生活(幸せと表現する場合もあるだろう)をする可能性は高い。仲間に恵まれた人とそうでない人は前者の方が生き残りやすい。

 

人間の置かれた環境は実に多様だ。まずもって全く同じことはない。人間の能力も多種多様だが、その振れ幅は環境ほどではない。ただ、それでも人間はそれぞれに努力するしかないし、努力する必要がある。「世界」はきっと少しずつ広がっていく。でも、生き残るのは強いものだ。ただ、弱いものも生き残れるといいなと思う。