続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ホーホケキョ となりの山田くん 高畑勲

 

 

ジブリ映画の中ではぶっちぎりでマイナーな作品ではないだろうか。その一方でめっちゃチャレンジングな作品でもある。なんせ原作は新聞連載の4コマ漫画。一体誰が、その原作で長編映画を作ろうなんて言い出したのか。いや、長編にしてしまったのは高畑勲監督なのか。

 

1999年公開の作品だが、改めて見ると面白い。

 

まず、アニメ。日本の漫画がそのまま動いている。鉛筆で手書きしたような、背景もキャラクターもちゃんと描ききらない。デフォルメや省略が日本の漫画の特徴なんだろう。それこそ鳥獣戯画の時からそうなんだろう。

 

スパイダーマン:スパイダーバース”を観たときに「アメコミがそのまま動いてる!ハリウッドのアニメすげえ!」と思ったが、今思えば20年も前に高畑勲は日本の漫画をそのまま動かしていたのだ。そして、それはそのままかぐや姫に繋がっていくのだろう。いや、本当にすごいのは高畑監督のイメージを現実のものにしたアニメーターの人々なのだろうか。

 

ストーリーはほとんど無い。そもそもが4コマ漫画なんだから当然かもしれないが、むしろ「ストーリーなんかなくてもいいやん。そのまま映画にしよう」という判断がぶっ飛んでいる。誰だって映画を作る以上、ストーリーとか物語の意味づけを考えてしまうのでは無いだろうか。

 

なので、短編を大量にくっつけたような、テンポの良い映画となっている。そこに描かれるのは昭和〜平成(前半)の日本のごくごくありふれた家庭だ。キャラクターは個性的で、それでいてどこにでもいるような山田一家だ。おっさん・おばちゃんは「ああ、そんなことあるある」という気持ちで見てしまう。一方、今の子供にはもう伝わらないかもしれない。気がつけば時代が変わっているということなのだろう。

 

ラストシーン。ののちゃんにせがまれてか、山田一家は家族でプリクラをとる。腹も減ったし飯を食いにいくかと歩き出すお父さん。残る4人はプリクラを見ながらわいわいしつつ、お父さんのあとをついていく。ポチも気が付いてあとを追って走り出す。ポチはそのままみんなを追い抜いて駆け抜けていく。犬って走ってると楽しくなっちゃう時あるよね、というのがこっそり入っていて、犬派の僕としては大変嬉しかった。いやしかし芸が細かい笑