続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

この世界の片隅に

 

この世界の片隅に

この世界の片隅に

 

 

最近の日本映画では考えられないロングランを達成した一昨。今日でちょうど1000日だそうだ。ざっと2年半。とんでもないことである。

 

映画は、常に時代(社会)の鏡である。特にヒット作は、その時代をはっきりと写し出す。この映画のヒットはどんな時代を反映しているのだろうか。もちろん映画の出来は良いし、クラウドファンディングに支えられて制作されたという点も注目を集めるところだと思う。でもそれだけでここまでのヒットにはならないだろう。

 

ヒットの理由の一つはリアリティであると思う。まるですずさんが本当に実在していたと錯覚するような感覚がこの映画を観た後にはある。当然、全てフィクションなのだが、それだけ地に足つけた映画作りがされているのだろう。

 

多分スターウォーズに始まるSFブーム以来、映画はフィクションの世界を作ることに傾倒してきた。映画を見るとき人々は現実ではない何処かへ連れて行ってもらえることを期待していた。それは現実の苦しさからの逃避であったのかもしれない。

 

時間とともに世の中はずいぶん変わってきた。なんだかんだ言って日本の社会も豊かになった。現実を生きる苦しさが無くなった訳ではないが、多少はマシになった。そしてそろそろみんな現実からの逃避に飽きてきたのかもしれない。

 

「現実にあった(かもしれない)こと」に世の中の興味が移ってきたのかもしれない。夢のような世界や抜群にかっこいいヒーローよりも、ごく普通の人の暮らしを観たい。現実世界での出来事を知りたい、ということだろうか。