続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

利休にたずねよ 山本兼一

利休にたずねよ (PHP文芸文庫)

利休にたずねよ (PHP文芸文庫)

稀代の茶人、千利休をえがく歴史物。構成や着眼点がおもしろい。

千利休が作り上げた侘び茶の作法。それに溢れる創意と工夫は今の世にも生きている。ぼくはお茶のことは詳しく知らないが、そこには一座建立のためのきめ細やかな気遣いがあるのだろう。しかし、本作では思い切って現代に伝わるその気遣いを取っ払い、その形式だけを作品に持ち込んだ。そして、利休が何故その形式に行き着いたのか。その根っこにある事件を描いている。とても思い切った解釈で、まさに歴史ファンタジーという感じでおもしろい。

また章ごとに時系列や語り部を自在に入れ替えることで物語に立体感が生み出されている。時間や空間を超えて、さまざまなつながりに気づかされることで、時間に沿って流れるだけの単純な歴史ではなく、複雑な群像劇としての歴史物語になっている。

個人的には「へうげもの」を読んだこともあって登場人物や時代の空気を受け入れやすく、非常に楽しめた。こういう本に出会っていれば学校の社会の授業も楽しめたのかもしれない。