続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ゾラ・一撃・さようなら 森博嗣

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)

探偵の頸城悦男はある日、志木真知子と名乗る美しい女性から、元政治家の法輪清治郎から「天使の演習」という美術品を取り戻してほしいと依頼を受ける。しかし一方で、プロの暗殺屋のゾラが法輪を狙うとの噂が流れる。果たして頸城は仕事を果たすことができるのか。

ハードボイルドな世界観と軽妙な掛け合いが楽しい一作。300ページ程度の単行本でサクサク読める。本作では事件よりも、そこに至るまでの人間関係が丁寧に描かれる。人は皆秘密を持っている。探偵の頸城は少しずつ秘密に踏み込んでいく。その過程が、なんとなく痺れるようで心地よい。

そして行き着く事件と、そのあとのラストへ向けての激流。このギャップも気持ちがいい。じっくり溜めて一気に放出するという感じだ。

森博嗣ファンとしては「天使の演習」が出てくるだけでこの本を読まないわけにはいかない。またも事件を起こすこの美術品は一体どんな数奇な運命を辿るにだろうか。