古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家 井形慶子
古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家 (新潮文庫)
- 作者: 井形慶子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/05/28
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 13回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
日本の家はこのままでいいのか(はじめに、の表題)
イギリスかぶれが英国の家を褒めちぎり、日本の家をこきおろす一冊。はじめの100ページほどで読むのをやめた。自分の国にダメ出ししているヒトをみるのは、なんとなく恥ずかしいものだ。
建築はその地方地方のカルチャー(文化、というよりは生育環境という意味で)に大きく影響される。欧州では古来より石の建築が発達した。材料として豊富な石材があり、地震などの災害も少ないためだろう。石の建築は丈夫だ。パルテノン神殿だって、壊れてはいるが今もなお建っている。だから、欧州では家は永くあるものと認識されているのだ。部分的に修繕を加えていけば、人間の寿命からすれば永遠のような時間を家は耐える。そして、永くあるものを作る上ではその影響を深く考えてプランを練るのが当然だ。
一方、日本では木の建築が発達した。国土の大半が山で木材には困らない。地震が多い本邦では石の建築は崩れて危険だ。木の建築は脆い。地震雷火事親父、台風一過で更地に帰る。だから、日本では家は壊れるものなのだ。そう遠くないうちに壊れるだから、あまり深く考えてつくらない。周辺の景観への配慮などあるはずがない。その周辺の景観の方が先に変わってしまうかもしれない。日本の家はどこまでいっても仮宿なのだ。
もちろん西洋文化の流入で、日本の建築も丈夫になった。地震には耐えられないが、台風ぐらいならよほど直撃を食わない限りは大丈夫だろう。だが、人々の意識のはまだ変わっていないと思う。日本全国に多数ある空き家がそれを物語っていると思う。「ほっといてもそのうち崩れて自然に変えるだろう」という意識が家主にはあるのだ。まさか自分が死んでも家だけ残っていると持ち主は思っていないのだろう。
西洋文化に憧れるのはいいが、上っ面だけ真似してもいつまで経っても追いつかない。自分自身の足元見つめることも必要だ。