1984
小説も読もうとしたけれど、真ん中ぐらいであきらめた。怖すぎて、人を信じる気持ちを失いそうになったのだ。読めなかった。
映画でなら、もう少し先へ進めた。それでも、かなり苦しい時間ではあったのだけれど。
この映画はSFである。人間の知的な残虐性が最大限発揮されたなら、その支配下にあるものはどうなってしまうのか。
現実の世の中は映画の中よりずっといい方向に向かっている。それは多くの先人が、世の中をいい世の中を作ろうとしてきた結果なのだろう。裏を返せば、人間はなにかのはずみで映画のようになってしまうことも十分考えられるのだ。
だから、このディストピアを真摯に受け止めないといけない。嘘っぱちの世界と笑ってもいい。でも、この世界が現実に起こりうる可能性を捨ててはいけない。恵まれた現代の僕たちには感じにくくとも、このディストピアの芽は世界中に芽吹いている。ただ、多くの人間がそれを丁寧に摘み取っているから世界は今の顔を保っているのだ。
生きることの苦しみはどこから来るのか。それはよい社会の確立にあるのかもしれない。