続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

血と肉

 

血と骨

血と骨

 

 「なんなんすか?あのおっさん?」(ヤクザの下っ端)

「化物だよ」(ヤクザのアニキ)

 

大正時代。朝鮮から日本へ渡ってきた男・金俊平(キム・シュンペイ)。ギラついた目をし、暴力にものをいわせ自分勝手に生きる男は、ヤクザにも恐れられる存在として大阪の下町に君臨する。かまぼこ製造業で成功し、金貸しとしてさらに頭角を表す金。しかし、老齢を迎えその人生は転落していく。化物の成功と破滅を描く。

 

猜疑心溢れる主人公・金の存在は痺れるような緊張感作品に生み出している。えげつないシーンが続くが、一方、そこには何が何でも生き抜いてやろうという金の執念を感じる。「生きること」とは元来この執念なのかもしれない。文明が発達し、人間はその執念を失っている。いや、見えにくくなっているだけか?化物と呼ばれた金も、人間にはちがいないのだから。