続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

火花 又吉直樹

火花 (文春文庫)

火花 (文春文庫)

漫才コンビ・ピースの又吉が芥川賞を受賞したことで話題になった一冊。
現役の売れっ子芸人が、芸人の世界をありありと描く。とくに売れない若手芸人に焦点をあて、彼らの焦り、苦悩、喜びなど様々な感情が描かれる。

ある程度虚実入り乱れる物語なのか、全くの創造なのかはわからないが、確かにこれほど若手芸人として生きることを描いた小説はないと思う。テレビに出てくるのはその激しい世界の氷山の一角にすぎない。

競争の激しい世界である。世間に深く関わる仕事である。お笑い芸人は、アスリートが日々のトレーニングを積むように、笑いのセンスを磨くのだろう。いろんな奴がいて、天才肌の不器用な奴もいれば、世の中に合わせることで売れていくものもいる。ネタとは違うところに価値を見出されて売れるやつもいる。表現することを求められる世界では、常につきまとうジレンマなのだろう。やりたい事と求められることは。この辺に普遍的な価値観につながるところがあって、共感を呼ぶ作品だと思う。