続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

天地明察 冲方丁

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

「羨ましい限りですねぇ。精魂を打ち込んで誤謬を為したのですからねえ」(伊藤)

御城碁で幕府に仕える渋川春海。しかし、彼はすでにその仕事に飽きていた。趣味の算術のほうがよっぽど面白かったのだ。そんな彼に与えられる大仕事は、この国の暦を作り直すことであった。春海と天との壮絶な勝負が始まろうとしていた。
この上巻では、一瞥即解の天才・関孝和、子供のように星を読むことを楽しむ伊藤と建部といった春海の師にあたる人物との出会いが描かれる。己が何を為すべきか、いまひとつ定まらぬ気持ちでいた春海は、師との出会い、勝負を通して自分の道を見出して行く。なんともワクワクする熱い展開で、時代物を読んでいる感じがまるでしない。今も昔も、仕事に生きがいを感じるという人の心は変わらない。
そんなストーリーより、途中に出てくる算額の問題にぼくは惹きつけられた。どうも解かずにはいられない。解かないと先が読めない。そんな性分のくせ、頭がいいわけでもないのでずいぶん苦労した。本を読んでる時間より、問題を解いてる時間のほうが長かったんじゃないだろうか。
がっかりなのは2問目の招差術の問題で、この問題は不適じゃないだろうか。どうも等差数列であることが前提でないと解けないようだ。問題文にそのような記載はない。また、等差数列だとしても星の数は14も要らない。無駄な条件が多い。
この2問目はストーリー的にも大事だ一問なので、なんだかがっかりしてしまう。作者や出版社を含めて、誰も気がつかなかったのだろうか。大変残念である。