続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

夜は短し歩けよ乙女 湯浅政明

 

 

「こうして出会ったのも、何かのご縁」(黒髪の乙女)

 

 森見登美彦氏の人気小説のアニメ映画化。

 「黒髪の乙女」に恋する「先輩」は外堀をナカメ作戦(なるべく、彼女の、目に留まる作戦)を実行し、外堀を埋め続けていた。ある日の大学のクラブのOB結婚式、今日こそは作戦第二弾会へと目論む先輩を、知ってか知らずか乙女は夜の街へと繰り出していく。果たして二人の運命や如何に。

 原作の現実とファンタジーがごっちゃになったような不思議な雰囲気がそのままアニメになった。きれいで不思議でえかわいらしい絵柄は実におもしろい。登場人物の動きや声もびっくりするぐらいイメージどおりである。原作ファンならぜひ観て欲しい。僕らの頭のなかに居た、あの不思議な京都の街が銀幕に映し出される。

 原作でもいい味を出していた樋口・羽貫コンビは映画でも乙女を夜の街へと導く。この2人みたいな関係を、ぼくは「友達でも恋人でもない不思議な何か」であると思っている。もとは大槻ケンヂのエッセイに出てきた男女の仲を表す表現だったか。確かにこのよくわからない人間関係は存在すると思うのだが、未だに適切な言葉が見つからない。ただ、ぼくもこういう関係を誰かと気づいてみたいとたまに思うのだ。

 映画オリジナルの要素もおもしろい。ファンタジック恋愛小説に監督は「時間とは何か」というテーマを盛り込んだ。原作では章を改めるごとに別の日だったが、映画では全ての出来事がたった一夜に凝縮された。李白さんや詭弁論部のOB達は過ぎゆく時間に流される老人となり、逆に乙女は時間の流れを謳歌する若者になった。印象的に挿入される時計には様々な文字盤が表示され、不思議な動きしている。残念ながらその解釈はぼくにはまだうまく出来ていないが、なんとなく感じるものは有る。うーん、もう一度観て考えてみたい。