続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

花物語 西尾維新

花物語 (講談社BOX)

花物語 (講談社BOX)

「まぁ若造でも老人でも、人生に悩みは尽きないが、しかしおいしい肉を食えばそんな悩みは全て解決するのさ」(貝木泥舟)

物語シリーズ第8弾。神原駿河の前に現れたかつてのライバル・沼地蝋花。人の不幸話を集める彼女の目的は一体?

サイドストーリー的な一巻。主人公・阿良々木暦は物語にほとんど関係しない。故に語り部は神原駿河にバトンタッチ。面白いのは語り部が変わったことで作品の雰囲気がガラッと変わることだ。人一倍「悩み」に苦しむ神原の1人語りは、太宰治人間失格のような純文学っぽい雰囲気を醸し出している。青春という作品全体のテーマとも相まって、独特の空気を生み出している。

個人的には、ライトノベル特有の(?)妙な軽さが抑えられていて非常に読みやすかった。フツーの小説に近い感じだろうか。

沼地蝋花の悲しさは、なんだか非常に共感できた。現実をよく知っているものこそ、夢や希望を下手に持てず苦しむ。自分が底なし沼に落ちたなら、脱出よりも道連れを探すことの方が面白いのかもしれない。ラストシーン、ふっと消え去った蝋花は一体どうなってしまったのだろうか。