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続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

沈黙〜サイレンス〜 マーティン・スコセッシ

『沼には何も根付かない』(岡田三右衛門)

日本での布教に苦しみ棄教する道を選んだ背徳司教のお話し。怖いくらいのリアリティを持って切支丹を描く。その過酷さたるや、目を背けたくなるほどだ。

信仰とは、宗教とは何かを考えるいいきっかけになりそうな映画。日本人なら一度は見てもらいたい。この世には色々な世界があるのではない。多様な世界観が有るだけなのだ。

印象に残ったのは『日本人は信仰の対象とするものを欲しがる』という描写。十字架、絵画、仏像、御神体、そして太陽。日本人はものに対していのりを捧げる。そこに神や仏が宿るからだ。つまり日本人の文化では神は『宿る』ものなのだ。一方で、キリスト教の神は『在る』ものだ。この差は大きい。宿る神からは逃れることができる。ものから距離を取ればいい。宿る依り代がなければ神は無い。これが日本人と西洋人の根本的な宗教観の(あるいは世界観の)違いだと感じた。

この映画、原作は日本人で出演者やスタッフにも多くの日本人が携わっている。日本の時代劇としても非常によく出来ている。繊細な心の機微、張り詰めた空気、日本のお祭り騒ぎの雰囲気。これをマーティン・スコセッシにやられてしまった。時代劇はもはや日本人にしか作れないものでは無いのかもしれない。