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続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

命売ります 三島由紀夫

本棚

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

「生きたいという欲が、物事を複雑怪奇に見せてしまうんです」(羽仁男)

己の人生に飽き飽きし、自分の命を売ってしまうことにした青年、羽仁男。彼の新聞広告に誘われて舞い込む奇妙な依頼の数々。果たして彼の運命やいかに。

平凡な人生に人は飽き飽きしている。いっそ諦めてしまおうと思うと、羽仁男のもとには数奇な運命が舞い込んでくる。人生はそんなものかもしれない。捨てようと思うと、案外いい方向へ転がっていくのだ。逆もまた然り。これは頭の悪い人間の言い分かもしれない。でも、頭のいい人間より、悪い人間の方が多いのだ。数が多いほうが正しいのなら、頭の悪い人間の人生が正しい。とにかく、思うようにならないのが人生だ。

三島由紀夫は名文家と誰かが評していた。確かに、本作はスラスラと読める。1968年の作品とは思えない。古臭さを感じさせない。テーマもまた現代に通じる。命を捨てようとする若者は今も昔もいるのだろう。社会とはそういうものだ。馴染めない奴はいるものだ。一部を切って、全体を生かすのが社会なのだから。もし、悲しい「一部」だと自分を感じるなら、本作を読んでみるがいい。諦めることで開けるものがあるのかもしれない。