続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

有頂天家族 二代目の帰朝 森見登美彦

「なぜなら愛とは押しつけるものだからですよ」(淀川教授)

毛玉ファンタジー第2弾。たぬきと天狗と人間の、阿呆な争いがまた始まる。

赤玉先生の息子、通称二代目が京都に帰ってきた。弁天を跡継ぎにと考えていた赤玉先生、息子とは100年に渡る大げんか。たぬき会では新たな頭領、偽右衛門を決めるためあちこちで策略が繰り広げられる。

親を継ぐ、ということがこの作品のテーマだろうか。我らがたぬき4兄弟の長男矢一郎は父である先代偽右衛門のあとを継ぐため奔走する。対するは夷川早雲、あの手この手で自分の評を集めようと暗躍する。一方では、天狗にはならないと心に決めた二代目が赤玉先生と対立する。人間でありながら天狗の力を持つ弁天は、天狗親子を翻弄する。

古き良き「人間臭さ」に溢れるのがこのシリーズのいいところだ。「たぬき臭さ」とでもいうべきか。前作のしっちゃかめっちゃかな大あばれからすると、今作は政治っぽいテーマがあって少し真面目だ。個人的には前作の「京都の街を電車で走り回る」ようなバカバカしい展開が大好きだったので、ちょっと拍子抜けの感じ。ただ、兄弟それぞれの成長が見れたりして、ほっこりした気分になった。

どうやら3部作になるらしく、そこはかとなく伏線が散りばめられているようだ。終わり良ければすべて良し。次も読んで、兄弟たちをのほほんと見守っていたい。