続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

エクス・マキナ

外界から隔離された研究所。主人公ケイレブはその所長ネイサンに呼ばれそこで仕事をすることになる。他言無用の契約を交わし、彼に与えられた仕事は、完全な人工知能の完全性を評価するという前人未到の仕事であった。まるで人間にような人工知能。怪しい雰囲気のネイサン。そして検証開始からほどなくして人工知能はケイレブに告げるのであった。「ネイサンを信じてはいけない…」と。

実に怪しい雰囲気がうまく出ているミステリ作品。果たして何を信じればいいのか。不安なグラグラする感じがよく出ている。音楽もよく、作品全体に漂う緊張感は一級品だ。

観客はケイレブに立場で、ネイサンと人工知能のどちらを信じるべきかをグラグラと考えることになる。この構図は見事。天才ネイサンは我々凡人には理解しがたい。怪しげな行動もおおい。いつも酒を煽っているし、やたらと秘密主義だったり。怪しいぐらいに怪しい。一方、人工知能も怪しい。人間らしい思考を見せるかと思いきや、人間と噛み合わない会話もする。表面上はいかにもピュアな、世間知らずな知性を感じさせるが果たして本当に思考しているのか。どこまで信じていいのかわからない。


本当の思考とはなんなのか。本当の知性とはなんなのか。本当の言葉とはなんなのか。

人工知能という存在を介して、「考えるとは何か」を考えさせてくれる作品であった。森博嗣の小説に似ている。