夜歩く 横溝正史
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1973/03/01
- メディア: 文庫
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ああ、恐ろしい、ゾッとする。私もいまに殺されて、首をちょん斬られるのではあるまいか。(屋代)
金田一耕助シリーズ第7弾。シリーズでは珍しく小説家屋代の目線で描かれる。このため金田一耕助の出番は少なく、後半からゆっくりと登場する。目線が違うのでいつもとは少し違った印象の金田一耕助が見れる。この辺の描きわけがでるのは流石横溝正史というところか。
金田一シリーズは戦後のグレーな空気の中で陰鬱な事件が起きる。その裏にあるものもドロドロとおぞましい。唯一、金田一耕助だけがその闇を照らす勇気を持っている。
それにしても本作ほど『戦争の闇』を強く感じたものはない。戦争が犯人を狂わせた、という印象が強い。その意味では作中の被害者は皆戦争の被害者なのかもしれない。