続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

夜歩く 横溝正史

夜歩く (角川文庫)

夜歩く (角川文庫)

ああ、恐ろしい、ゾッとする。私もいまに殺されて、首をちょん斬られるのではあるまいか。(屋代)

金田一耕助シリーズ第7弾。シリーズでは珍しく小説家屋代の目線で描かれる。このため金田一耕助の出番は少なく、後半からゆっくりと登場する。目線が違うのでいつもとは少し違った印象の金田一耕助が見れる。この辺の描きわけがでるのは流石横溝正史というところか。

金田一シリーズは戦後のグレーな空気の中で陰鬱な事件が起きる。その裏にあるものもドロドロとおぞましい。唯一、金田一耕助だけがその闇を照らす勇気を持っている。

それにしても本作ほど『戦争の闇』を強く感じたものはない。戦争が犯人を狂わせた、という印象が強い。その意味では作中の被害者は皆戦争の被害者なのかもしれない。