喜嶋先生の静かな世界
喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/16
- メディア: 文庫
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森博嗣の自伝的小説。
主人公のぼくは、喜嶋先生の背中を見て、研究者としての一歩を歩み始める。
おそらく喜嶋先生にはモデルがいるのであろう。しかし、こんなにも自分の好奇心に純粋な人間がいるのだろうか。いや、きっといるのだろうか。そんな人間が居ることを心から信じたいと思う。
大学という現場を、実に見事に描き切った作品であると思う。著者が元大学人であるからこそだろう。
この本を読んで、大学人っていいなと感じた人は、是非大学院への進学を考えてみてほしい。君たちが人間の限界を押し広げていく。
逆に、この本を読んで大学人に幻滅する人も居るだろう。それも当然だと思う。喜嶋先生はやはり『一般』から見れば変人だろう。主人公のぼくもいわゆる朴念仁のように描かれる。でも、彼らは必要なのだ。人の役に立たなくてもいいのだ。彼らの存在こそが、人間の象徴とも言える。そう思える作品だった。