数えずの井戸 京極夏彦
『外れものでも鈍間でも楽しく生きるこたァ出来るンだ』(
江戸怪談シリーズ第3弾。怪談の王道とでもいうべき、 番町の皿屋敷がテーマだ。
本作のテーマは『人の儚さ』にあると思う。 登場人物は皆それぞれに目的をもち、そのために行動している。 しかし、お話の中でそれらが成就されることはない。 どうにもうまくいかぬ世の中で、読み手としては苦しい限りだ。
その苦しさ故か、個人的には、全体を今一つ楽しめなかった。 とはいえ、部分部分は作者独特の切れ味鋭いやりとりが光り、 面白い。
このお話に結末はない。全てが曖昧に始まり、 そしてまた曖昧に収束していく。 そのあたりが前2作と異なる挑戦的なところともいえる。