グーグーだって猫である 小説版 犬童一心
「みんながしあわせになれる漫画って、なにそれ。みんなって、だれ?」(小島麻子)
ひとりの漫画家とそのアシスタントを中心に、シンプルにー、コンパクトに、「生きる」というテーマを扱った作品だと思う。タイトル通り猫もでてくる。猫は飼い主の人生において、一体何の意味を持つのか。本作から感じるのは、飼い主の人生の「あそび」を担う猫の姿だった。
あそびとか余白は大切なものだ。本体だけをぎゅうぎゅうと詰め込んでも、仕上がりはよくない。あえてあそびを作ってやる方が、本体が際立つのだ。
勝手気ままに生きる猫は、ただただ飼い主に手間を掛けさせるだけかもしれない。旅行に行くのも一苦労だし、散歩に出すのも都会じゃあ怖い。でも、その一見無駄に思える手間こそが、飼い主の内面を際立たせるのだろう。その手間をかける姿にこそ、その人の本質が垣間見えるのだろう。
人生は辛いことの繰り返しだ。そこで硬くなってしまっては、ひとは負けてしまうのだろう。あそびをもつことは人が生きる上でとても大切なことなのだ。そんなことを思った。