続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

覗き小平次

覘き小平次 (角川文庫)

覘き小平次 (角川文庫)

『この世の中は全部嘘だぜ』九化の治平


ただそこにいるだけで幽霊そのものである役者、小平次。しかし、逆にまともな芝居は一切できず、大根役者と呼ばれ一応の妻からさえもボロクソに嫌われる。そんな彼を中心に、闇にうごめくものどもが集まり、事件が動き始める。

基本的小平次とその妻が事件を通して変わる、というか、気づく、というのか、ある種の愛を見出すストーリー。京極夏彦の作品らしく、異形の愛が描き出される。
という本筋よりも、個人的には本シリーズにちょいちょい顔を出す、事触れの治平が、小平次との偶然のやりとりの中で己を見出すところが好き。九化の治平から事触れの治平へ、この作品では多くの登場人物の成長が描かれるか、彼の成長が一番、とぼくは思っている。