続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

悪童日記

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

「ちがうよ 僕らは自分自身を恥じたんだ」
戦争のなか、双子の兄弟が生きる姿を、独特の日記形式で描く。
戦争下という厳しい状況のなか、双子一生懸命生きる姿・・・かと思ったら大間違い。戦争というよりも戦争により荒んだ人々のこそが恐ろしく、その間でこれまた怪物のような双子が生き抜く。生きるためなら手段を選ばない。子供でありながら氷のように冷めた精神で周囲を穿ち、淡々と生きるために生きていく。そのシンプルすぎる描写が、正義とか悪とか関係なく、もっと純数に人間そのものを描いている。人間が生きるとはどういうことか、今の恵まれた時代、意識することすら忘れていたとが浮かび上がってくる。何か、ぼくの中の何かが変わった気がする。そういう意味で名作だと思う。