続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

後巷説百物語

後巷説百物語 (Kwai books)

後巷説百物語 (Kwai books)

「世に不思議なし、世凡て不思議なりですよ」(一白翁)

ブックオフで見つけた京極夏彦さんの巷説シリーズ3冊目。1冊め、2冊めを読んでないけどなんとなく表紙のイラストに惹かれて買っていましました。でも、基本的に1話完結でしかもグイグイ引き込まれる世界観のおかげでガンガン読めてしまいます。

時代は維新が終わってまだ間もない明治。巡査の剣之進が持ち込む不可解な事件。友人たちと相談してもなかなかうまい解決が見つからない。そこで街の片隅に住む変わり者の老人、一白翁こと山岡百介のもとへ知恵を借りに行く、といことで話は始まる。

一白翁が語るのは、かつて共に旅した裏の世界の住人たち。世の中の不思議(妖怪、伝説)の仕業に見せかけて巧妙に仕掛けを練り、鮮やかに事を丸く収める彼らの活躍は実におもしろい。一見不思議にしか見えないことにも、その裏にはキチンと理屈があり、巧妙にヒトが・モノが動いていく。

あわせて面白いのは時代の描写だ。「江戸」から「明治」へと時代が大きく変化し、様々なものが失われ、様々なものが生まれた時代。剣之進やその友人は時代を表すかのように個性豊かに意見を交わす。さらにそこに江戸の時代を生き抜いた一白翁が加わり、鮮明な時代のコントラストが見える。

事件を通して、妖怪を通して、人々を通して、明治初期の混沌とした時代を描きだす。とても深い作品だ。