続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本 武田友紀

人にはそれぞれ個性がある。その1つとしてアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提案したのが Highly sensitive person (HSP) という性質である。ようは「敏感すぎる」という性質で、エレイン博士によればHSPの人は5人に1人ぐらいの割合なんだとか。本書では、HSPの人を「繊細さん」とし、繊細さんが自身の性質を理解し、生きる苦痛を和らげるためのアドバイス書き記されている。

僕自身はこの本を読みながら「自分も繊細さんの性質があるな」と思った。繊細さんにも程度はいろいろあると思うが、たぶん僕自身は軽いほうの繊細さんなのだろう。改めて文章で示されると自分の一面がはっきりするように感じた。

本書にあるアドバイスは繊細さんが見落としがちな価値観のズレを直してくれる。繊細な人間はマイナーで、そうでない人間とは感覚を共有することが難しいのだ。同じ人間なのだから、お互いに分かり合えるという幻想に繊細さんは陥っているのかもしれない。「みんな違って、みんな良い」という考えもあるのだ。では、それぞれがどう対処すれば良いのか。それを考えるほうが現実に即している。

とはいえこの本のアドバイスには批判的なところはない。著者自身も「繊細さん」であるからだろう。違いを認め、その上でそれを生かし、気持ちよく生きる術がまとめられている。非常に読みやすく、前向きな気持ちになれる本だ。

人間関係を中心に日々ストレスが溜まっている人は繊細さんなのかもしれない。一度この本を読んでみてはいかがだろうか。

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています 小林晶平

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

様々な「悩み」に古今東西の哲学者の思想を持って答えていく一冊。一章ずつは非常にコンパクトでわかりやすい。哲学に実践という感覚が非常によくわかる。

個々の章も面白いが、全体を通して哲学というものを考えることもできる。むしろそこが面白い。

ぼくは多くの哲学者の思想の中に「すべてのものは変わっていくし、その変化は自分ではどうにもできない」とベースがあるように感じた。その中で、「ではどう生きていくのか」という問いにはいくつもの答えがある。まだ人類の歴史の中にその最適解は生まれていないだろう。きっと僕たちは自分の答えを探しながら生きている。その意味ですべての人間は哲学者であり、哲学するとは生きることと同義であると思われるのだ。

こどものダンテ 神曲物語 蘆谷蘆村

こどものダンテ 神曲物語 (国立図書館コレクション)

こどものダンテ 神曲物語 (国立図書館コレクション)

大正14年に販売された「ダンテの神曲」をlこども向けに訳した一冊。非常にわかりやすく、神曲の内容を味わえる。キリスト教の世界観を学ぶのに最適な一冊ではなかろうか。

しかし、この本とても現代の視点からはこども向けに見えない。社会の成熟、進歩に伴って、子供の成長は遅くなる。同じ年でも昔と今では精神の成熟度は全く違うのだろう。今の中学生はおろか、大学生でもこの本を読む人は少ないだろう。かくいう自分もおっさんなのでなんとも言えないが。

またダンテが天国で出会う聖人の中に「近頃の世に中はダメだ。わしらが生きていた頃は…」というようなことを言うやつがいるのには驚いた。いつの世も、何処の世も、年寄りの目からすれば若い奴はダメなのだ。もっとも、ピラミッドに壁画にも同じ文言があるらしいのだが。

アベンジャーズ エンドゲーム

 

アベンジャーズ / エンドゲーム (オリジナル・サウンドトラック)

アベンジャーズ / エンドゲーム (オリジナル・サウンドトラック)

 

 

MCUの大看板アベンジャーズシリーズも1つも大きな段階を迎えた。前作では強大な敵・サノスにより宇宙の生命の半分が消失してしまう。落胆する生き残り達。地球に住まう人類に、宇宙のあまねく星々の生命に、大きな影がふりかかる。果たしてアベンジャーズはサノスの手から生命を取り戻すことができるのだろうか。

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夢をかなえるゾウ 水野敬也

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

「もし自分が変われるとしたら、行動して、経験した時や。そん時だけやで」(ガネーシャ)

Kindleを買いました。今さら感はいろいろあるけど、とにかくこの一冊を読んだ。

電子書籍の便利さに驚いたり、kindleのありがたさに気づいたり。そしてこのいっさつは「中高生のドラえもん」だと思った。

もちろんパロディにもなっているのだけれど、謎の神様ガネーシャが、ダメな主人公を成功者へ導くべく課題を課していく。結局ガネーシャがダメなところなど、ドラえもんっぽい。ちがいはえ、何だかんだ主人公が絵成長していくところと、現実の人びとを引用することだろうか。

とかく読みやすい本ではあるので、中高生は読んでみて欲しい。20歳超えたら、ちょっと躊躇してもいいだろう。読むべき本は他にも多々ある。いまさらである。つまり、この本は教訓を含むエンタテインメントである。その意味では、良質な漫画と変わらないだろう。

もらい泣き  冲方丁

 

もらい泣き (集英社文庫)

もらい泣き (集英社文庫)

 

 

実話に基づく33の短編を集めた作品。もっとも著者が身の回りの友人からネタを集めて、編集して物語を作っているそうなので完全な実話ではないようだ。元々は雑誌の連載ものだったらしく、ちょこちょこ入る苦労話も興味深い。

 

短編集なのでちょっとした時間に読める。僕は昼休みに休憩がてら1日2話ずつ読むことにした。さらっと通り過ぎていける話もあれば、ぐっと心引き込まれる作品もある。人それぞれ琴線は違うから、この1冊を読んでも、きっと感想は人それぞれだろう。

 

僕はいくつかのストーリーから、前向きに生きることと今を生きることの大切さ、というか格好よさみたいなものを感じた。人間生きてれば本当にさまざまな形で辛いことや苦しいことがある。その時大切なのは今この瞬間にほんの少しでも前へ進もうと生きる姿勢なのではないだろうか。別に辛い時こそ頑張れ、というようなことではない。休むことも前へ進むための準備だ。そうやって一つ一つやっていくことが大切なのだと思う。

殿、利息でござる!

 

殿、利息でござる!

殿、利息でござる!

 

 

貧乏な町であった吉岡宿は、殿様に金を貸し付け村の生活をよくすることを思いつく。とはいえそれは無茶も無茶。元金集めからお代官の説得まで、全ての壁を超えねばならない。一歩間違えばクビが飛ぶ。果たして吉岡宿の行く末やいかに。

 

いやコレはタイトルにだまされていた。つまり「うまいことやった町人」のお話が描かれているものと思い込んでいた。

 

もちろんそういった側面はあるのだが、痛いやコレは人情ドラマである。そして「日本人の心意気」を感じる映画で有る。

 

資本主義は確かにわかりやすい。しかしそこにこの心意気は無い。それをいいとも悪いともいうつもりはない。ただ、そういった価値観があることは知られねばならない。「多様性」とか言いながら、世間は西洋的価値観に飲み込まれる一方である。そろそろ、違う価値観の共存にこそ、価値を身言い出す時では無いだろうか。