続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

さよなら私 みうらじゅん

いろいろあるのが人生。
一生わからないのが自分。
これを肝に銘じてください。(著者)

みうらじゅんのエッセイ集。

くだらない話から人生について、あるいはそれらが融合した独特の思想まで、さらりと読みやすい文体で語る。1タイトル2ページというお手軽さ。なんだか悩みとか、頭の中に引っかかっていたものがスッと落ちる。そんな感じの一冊。なんだか余裕がない人はちょっと本書を開いてみてはいかがだろう。

花物語 西尾維新

花物語 (講談社BOX)

花物語 (講談社BOX)

「まぁ若造でも老人でも、人生に悩みは尽きないが、しかしおいしい肉を食えばそんな悩みは全て解決するのさ」(貝木泥舟)

物語シリーズ第8弾。神原駿河の前に現れたかつてのライバル・沼地蝋花。人の不幸話を集める彼女の目的は一体?

サイドストーリー的な一巻。主人公・阿良々木暦は物語にほとんど関係しない。故に語り部は神原駿河にバトンタッチ。面白いのは語り部が変わったことで作品の雰囲気がガラッと変わることだ。人一倍「悩み」に苦しむ神原の1人語りは、太宰治人間失格のような純文学っぽい雰囲気を醸し出している。青春という作品全体のテーマとも相まって、独特の空気を生み出している。

個人的には、ライトノベル特有の(?)妙な軽さが抑えられていて非常に読みやすかった。フツーの小説に近い感じだろうか。

沼地蝋花の悲しさは、なんだか非常に共感できた。現実をよく知っているものこそ、夢や希望を下手に持てず苦しむ。自分が底なし沼に落ちたなら、脱出よりも道連れを探すことの方が面白いのかもしれない。ラストシーン、ふっと消え去った蝋花は一体どうなってしまったのだろうか。

School of rock

難しいことは言わないし、言いたくない。
この映画はロックである。それで十分だろう。

ロックン・ロールに溢れる映画。
ロックを愛するものにも、ロックを軽蔑するものも見て欲しい。どう感じたって、ロックの神様は許してくれるのだから。

鬼物語 西尾維新

鬼物語 (講談社BOX)

鬼物語 (講談社BOX)


あいつのことを思い出しながら話そう(阿良々木暦)

物語シリーズ第11弾。刊行順は完全に無視して読んでみている。そんなわけで、細かいネタや一部登場人物などはいまひとつ把握できていない。

軽妙な掛け合いや、テンポのいい長台詞は読んでいて楽しい。ストーリーも斜め上を行く感じでまぁまか楽しめた。このシリーズはとにかく「軽い」のが売りなんだろうか。力を抜いて、ただただ楽しむことができる。30分の電車移動なんかの時に読みたい本だ。

ミッドナイト・イン・パリ  ウディ・アレン

 

 「現代」って不安なもんなんだ。それが人生だから。(ギル)

 

主人公ギルは売れっ子脚本家。でも、夢を目指して小説を書く。婚約者とのパリ旅行中も、彼は小説を書き続ける。そんな彼はひょんなことから「黄金時代」と呼ばれたパリへタイムスリップする。ヘミングウェイやダリといったもはや伝説の人々と出会う日々。美女アドリアナとの出会い。一方で、婚約者との関係は悪化していく。果たしてギルの決断やいかに。

 

ゴッホ大好きなぼくとしてはパッケージで無視できない作品。そして中身も中の上ぐらいの高評価。観てよかったと感じる一作だった。

 

シェイクスピアピカソ、ダリ、ゴーギャン、ダリといった個人的に大好きな人物が生き生きと主人公の前に現れる。作品を通じて彼らを知るのもよいが、一人物として描かれる彼らを観るのもいいいものだ(どちらも受けての創造の産物であることに違いはないが)。

 

作中には多くのテーマが含まれるが、1つの大きなテーマは「懐古主義」だ。昔はよかった、という気持ちはいつの時代にも存在するのだ。その安心感。その意味。それを改めて考える良いきっかけっとなる映画ではないだろうか。主人公ギルの答えは冒頭の引用文だと僕は思う。一方で、この作品には別の答えもあるのだが。

 

人生に対するするどい含蓄を含む言葉が端々に現れる。繰り返しっ観る必要のある映画だと思った。時代が変われば、そこに含まれるメッセージもまた変質する。そういう普遍性がある映画のように感じた。

 

ただ、最後に一つだけ言いたい。ゴッホ出ねぇじゃねーか。ゴーギャン出てくるのに。まぁ人格的に出せないだろうけどさ。

ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち ティム・バートン

ティム・バートン監督は世界の隅っこに目線を向ける。そんな監督だとぼくは思っている。
それは独特の世界観として監督の映画に反映される。ナイトメア・ビフォア・クリスマス、シザーハンズなどは実に印象的な名作だ。

このミス・ペレグリン~のトレイラーを観たとき、これこそ監督にぴったりの設定だと思った。

人知を超えた力を持つために、ミス・ペレグリンの庇護のもと俗世から隠れて生きる子供たち。そこに外界からやってきた主人公。主人公は子供たちと力を合わせ、それぞれの力を生かして大いなる敵に立ち向かうことになるのであった。
おおむねこんなストーリー。「X-menじゃねーか!」と思ったそこのあなた。大体そんな感じです。そこをティム・バートンがどう味付けするの津用名のか。そこが見どころ。

・・・で、結果としてはがっかり。
ちょっと古臭いゴシックな雰囲気は非常にいい。映像や音楽のセンスはさすがティム・バートン。しかし、ストーリーと設定がいただけない。

特に邪魔だったのが「時間」に関する設定。主人公一行は過去と現代を行き来することになるのだが、その辺の設定が正直よくわからない。過去の人物が現在に来たり、現代人が過去にいったり。タイムパラドクスが思いっきりあるけど、さらっと無視してストーリーが進む。個人的にはそういうとこの設定は詰めてほしい。気になる。

敵がバカっぽいのも今一つ。自分たちが視認できないモンスターを使役するのはどうなのよ。
ほっといたら勝手に滅びる気がするんだけれど。

ストーリーでは「子供たちの見せ場」がどうも弱い。人数が多いので一人あたりに割ける時間が少ないのは仕方がない。しかし、もうちょっとインパクトのある活躍をそれぞれしてほしかった。意外性があまりない。なんかもうちょっと面白くできそうなんだが。ジョジョとかハンター×ハンターみたいな頭脳戦が欲しかった。いや、ティム・バートンはそういう路線じゃないのはよくわかっているけど、一つぐらい。


ただ、サミュル・L・ジャクソンの顔芸は一見の価値あり。中盤からとにかくいろいろな顔をしてくれる。笑いを取りに来ている気しかしない。とくに強力扇風機で顔がひん曲がっているところはなかなか。
もう一つ、ガイコツ兵士がコミカルに戦う様子はいかにもティム・バートンっぽい。たぶん、ここのイメージだけで制作会社はティム・バートンを監督に起用してるよね?

まとめると、本作は小学生のうちにみとけって映画。20超えたらちょっと厳しいだろうと思う。深く考えてはいけない。楽しめばいのだ。

浜村渚の計算ノート 青柳碧人

数学をテーマにした探偵小説、ということでぜひ読んで見たかった。しかし、どうにも今ひとつ。

数学を愛するものが犯罪を犯すというのもいただけない。数学は教育に良くないとして、文系科目に偏った教育改革の起きる世界設定もリアリティがない。


登場する数学の知識も割とあっさりしている。4色問題やインドで発見された0など。どこかで聞いたことがあるんじゃないだろうか。かといって犯人にキラリと光るカリスマやインパクトもない。

ついでに、各章を対数で表したり、項を平方根を表したりするのもちょっと露骨すぎて恥ずかしい。

というわけで、中学生以下にオススメする一冊。おっさんが楽しむには、少々テンションが高すぎる一冊だった。